The Hospital of the Angel-Mestre
The Hospital of the Angel-Mestre(2010・6・29)
地域の背景
- 所在地はベニスからトレヴィーゾに走る鉄道の西側のゼラニーノ行政区にあり、マルツェネーゴ運河に注ぎ込むフォッサストルタ水路に接した場所。
- 病院は周囲の木々や農業用水路等の手付かずで残されている田園風景と調和するよう計画。
- 鉄道の線路という存在が、徐々に拡大するメストレ地区の工業化・都市化と田園風景という2つの相反する環境の防波堤の役割。
- このような状況が自然保護の意識を醸成し、周囲のランドスケープと同化した建築物の必要性が提議された。
- 今回のプランではこれまでの一般的な建築物のように機能面のみが強調されるのではなく、計画を特徴付ける建築的、環境的、風致的定義が付加されている。
計画のコンセプト1
- 計画のコンセプトは以下に挙げるような原則に基づいた哲学を採用している。
- 1.都市化と居住の問題に意識を向けた病院環境のヒューマニゼーション
- 2.自然環境や社会基盤的資産といった地域の特徴を尊重すると共に進展させる
- 3.基本設計、実施設計、建築、運営の全てのフェーズに於いて柔軟性と統制を確保する
- 1.の原則は建築物とそのユーザー間の機能的、知覚的関連性を意識したもの
- 2.の原則はすでに地域に存在する自然環境や社会基盤的な資源に手を加えていく上での計画の必要性を意識したもの
- 3.の原則は病院のレイアウトをモジュール形式を採用した幾何学的アプローチによって行い、将来的な拡張の可能性に対応すると共に判断基準の標準化を行うことにより、
- - 合理的な地表部分の活用
- - 建築的な必要性と技術的な施設計画の間のインターフェイスの構築
- - 増築の可能性の確保
- - 将来的に避ける事のできない社会的な医療需要の変化への対応
- - 建築物及び設備機器・施設のランニングコスト及びメンテナンスコストの最適化、最小化
計画のコンセプト2
- 病院施設は5つの建築ブロックから成り立っており、それら全てのブロックはセパレートされ独立している。
- 1. 病院本館
- 2. 駐車場ブロック
- 3. 物流及び中央設備プラントブロック
- 4. 霊安施設
- 5. アイバンク及びカンファレンスセンター
環境調査
- プロジェクトの重要性や建築物のタイプ、つぎ込まれる物資の量を考慮すると、都市的な側面を強く持つ新しい病院施設を自然環境と調和させる上で、周辺環境の調査は最重要事項であった。
- 建築物の向きとレイアウトの観点からは、環境への配慮と患者さんの快適性を事前に確認。
- 建物内部の空調システムの詳細を決定し、環境的均衡の維持・改善を図る上でも環境調査は重要
- デザインにおいてはグレート・セイル(巨大な帆)と呼ばれるガラスの壁を採用することにより、環境面での快適性を向上させている。特に病院の南西に面する病棟に対して、隣接する鉄道からの騒音を除去するフィルターの役割を演じている。
- グレート・セールの更なる効果としてはルーフの最上部と最下部に温度センサーに接続された開閉システムがあり、自然の排気を可能にすると共に内部の温度と湿度を制御し、必要とされる快適性を一般的に使用される機械的な空調システムに頼ることなく得ている。
- 5階建ての入院棟を覆っているファサードシステムによりガラスルーフの効用を補足している。ダブルスキンと呼ばれるファサードシステムにより高いレベルの防音効果を得ると共に、冬期の暖気の拡散防止と夏季の熱気の取り込みにより、結果として機械的な空調設備の使用を減少。
建築プロジェクト1
- メストレ病院は、より広範囲で技術的なサービスを必要とされる入院ブロックと植栽で覆われた外来ブロックを含む、直線的で非常に集約された構造である。来院者は地下に潜り込むように建物に入り、その後エントランスホールを経て、傾斜したガラスのファサードを持つ室内庭園にたどり着く。
- 直線的な建物は階段状をしており、一方では温室のようなホールを見渡せ、反対側では段々になった緑のテラスを見下ろすことができる。
- 建築物を覆う自然の要素と内部の緑化環境が同時に存在することが第一の特徴と言える。来院者に対して施設上部の地表と内部の温室的な風景の繋がりによって一貫性を意識させることができる。
- 外部と内部の植生が同時に存在することによりサービスブロックを緑の屋根で覆い、ガラスのファサードを建造物の垂直方向の中心に据えることができる。サービスブロックは地表のカモフラージュによってカバーされているが孤立しているわけではない。
- 病棟ブロックのフロアをオフセットすることにより、テラスの設置が可能となり、建物に自然な傾斜を持たせることにより素晴らしい結果を得ている。
建築プロジェクト2
- 病院建築を田園風景の中に設定するということは環境に対して悪影響を与え、環境的均衡を阻害する可能性を孕んでいた。
- そのような問題を解決する為に、できるだけ多くの植生を採り入れ、建造物と周囲の風景を同化させることにより失われる自然環境を再生させることに配慮。
- 植生の役割はただ単に風景に配慮をするというだけでなく、病院施設と鉄道施設や居住地区との間のバリアの役割も果たしている。
- 風景は人々の幸福と生活の質を決定する上で大事な要素であるので、調和、活気、均衡の意識を大事にしながら徹底的に調査を行った。
- 風景の質というものは秩序、形式的な均衡、多様性といった美意識よるところも大きいが、生活や作業という機能に適しているかという構造上の形式にもよる。
- 自然の風景は安全や穏やかで美しい享楽を与えてくれる。水、光、陰、様々な陰影を纏った植栽、匂い、音などの全ての要素は幸福をもたらし、伝統的な薬理学療法の補助的役割として、物理的及び心理的なエネルギーを生み出す。
病院施設1
- プロジェクトの根幹を成す病院施設はサービスブロックと入院病棟という明確な2つの要素から成り立っている。
- 基礎となる構造に必要な莫大な資源は、入院病棟ブロックの新たな土台として機能すべく、植栽によって完璧に覆い尽くされている。
- 各フロアが2.5メートルずつオフセットされている病棟の特徴的な構造により、北西面に緑のテラスを形成すると共に各部屋のスペースを増大させている。
- 建物の反対側となる南東面は外部の騒音の遮断と病院施設へと繋がるエントランスホール空間の定義付けという2つの異なった役割を持つ大きなガラスのファサードが特徴的。
- 病院の中心的な機能はサービスブロックに割り当てられており、地下の設備プラント、更衣室、グラウンドフロアの手術部、検査・処置サービス、一階のレセプションエリアから成り立っている。
- サービスブロックの上部に位置する6層からなる入院エリアは主に一般病棟に割り当てられている。

各フロアの詳細
- グラウンドフロアは入院患者のフローを第一に考えて設計されている。救急患者に対する全てのサービスと上層部に位置するフロアへの迅速で容易なアクセスを可能にしている。
- ビジターと外来患者はコントロールポイントを経て、それぞれが必要とするサービス部門へ導かれることとなる。救急部門は建物の東端に位置し、患者の選別とそのフローを決定するトリアージエリアから救急専用のオペレーティングルームへアクセスする。救急部門の隣には14床の短期の集中観察エリアがある。
- CTとMRIの機器をそれぞれ3台ずつ設置している画像診断部は、救急部門に対する即時対応を可能にすると共に、上層フロアからの外来患者と入院患者に対する容易なアクセスも提供している。
- 1.中央エリアには更衣室が付属した10室の診察室。
- 2.超音波診断機器センターには7室の独立した部屋が備わっている。
- 3.PET機器とそれに付帯するサービスのエリア
- 4.透析サービスエリアは中央の南側に位置し、16のベッドを備えている。
- 5.内視鏡センターは南東の端に位置し6つの部屋に加えて、準備室と術後の観察室も備えている。
- 6.手術部はフロアの北端に位置し16の手術室と4つの日帰り手術室があり、それら全ては中央にあるICUへ容易にアクセスできる。
各フロアの詳細
- 1階はビジターへの病院ブロックへのアクセスを提供すると共に印象的なロビーが設置されている。 エントランスホールには庭園と店舗がある上部フロアへと繋がる特徴的ないくつかの階段とエレベーターが設置されている。このフロアはレストランやバー、複数の懺悔室を備えた教会、管理オフィスやいくつかの外来サービス、レセプションエリアなど治療の環境というよりも商業活動を意識した都市生活の空気を演出している。
- 滅菌センターも1階に位置し、物流フローを考慮に入れたデザインとなっており、到着した使用済み器材は洗浄、乾燥、組立を経た後に滅菌が行われ、いったん倉庫に保管されてから最終的な搬送が行われる。
- オープンスペースとバッテリーレイアウトを採り入れた検査室もこのフロアにあり、血液検査センターとリハビリ部門も1階にある。血液検査センターには待合室と採血室及びドクターのオフィスが設定されている。リハビリ部門は2つのエリアに分かれており、一方は患者さんの入り口と事務オフィス、受付、待合室等があり、もう一方は実際にリハビリを行うジムと処置エリアがある。
- エントランスに対して反対側の面には管理部門のオフィス、医療スタッフの部屋があるのに対して、正面には予約専用オフィスやボランティア組織に割り当てる事のできる部屋がある。
各フロアの詳細
- 2階部分は入院ブロックと一般の来院者をセパレートする機能を持っている。メディカルディレクターのオフィスやコンサルタントのオフィス、オープンスペースに加えて、複数の外来クリニックが設置されている。
- 中二階のフロアは待合コーナーのような室内庭園の特徴を生かしたセクション。最も特徴的なのはホールに突き出し、階下の様子を観察することのできるバルコニー。
- ガラスのファサードには上方向にスライドして開くことのできる大きなドアがあり、非常時には南東側の丘へ繋がる非常口として使用でき、火災の場合は消防隊の進入に使用。
- 2階にはデイホスピタルも設置され、レセプション、スタッフエリアや待合室があるエントランスと患者さんの更衣室や処置室があるショートステイエリアがある。
各フロアの詳細
- 3階から7階までのそれぞれのフロアは入院病棟となっている。
- フロアには3つの垂直方向のリンクが中央部と両端に設定され、それぞれに階段、エレベーター、耐火設備などが設置されている。
- 各フロアは垂直方向のリンクを中心にして左右対称となっており、2つの大きな看護単位を形成。更に、階段部分の隣にはデイルームとビジターの待合室が設置。 3階から7階の各フロアは以下のように各部門に割り当てられている。
- 3階:頭部・頚部部門、冠状動脈ICU、心臓血管クリニック及び心臓外科
- 4階:頭部・頚部部門、産婦人科、新生児科、小児科
- 5階・6階:外科、内科
- 7階:個人面談室、精神科、伝染病科

病室1
- 5つの階を占める入院病棟は天井から床までの大きな窓が特徴的。大きな窓がもたらす開放感はプロジェクトの根本的な構成要素であり新しい病室デザインの考え方といえる。近代的な建造物であっても窓から入る光の量次第で部屋が刑務所の独房となってしまう。そのような状態だと、患者さんはほとんどの時間をベッドに横たわった状態で過ごすのに、窓枠の出っ張りや周りの壁が障害物となり、限られた外の景色しか見ることができない。しかしながら現代のデザインのトレンドは病院建築にヒューマニゼーションの重要性を強調するようになってきている。
- ヒューマニゼーションの強調というプロジェクトの目的は、建物への導入部分であるエントランスホールや待合室のような共用空間のデザインにも現れており、それらに使用されている材質、仕上げ、照明、色合いはホテルのような雰囲気を構成しているが、何よりも患者さんが滞在し治療を行う環境となる病室のデザインが今回の病院プロジェクトの最も根本的な特性を現している。
- 患者さんは大きく開かれた窓から見える変わり行く光、自然の色により、外部との繋がりをより一層強く感じることができる。
- もちろんガラス窓は直射日光や熱の分散といった諸問題は考慮に入れてデザインされている。フレームは熱伝導率の低いサーマルブレイクアルミニウムを使用し、ガラス自体にも音と熱を遮断する素材を採り入れている。

病室2
- 1.エントランス ドアスペースが廊下のラインからセットバックした位置にあると共に、バスルームの入り口に45度の角度を付ける事によって、病室内の医療スタッフの外の廊下に対する視界を確保している。
- 2.処置エリア ベッドスペースには高品質で特別な素材と機器を使用している。
- 3.シッティングスペース 窓際のスペースを使い椅子を設置し、より家庭的な雰囲気を演出している。患者さんはこの場所で食事をしたり、本を読んだりしてくつろぐことができ、何よりも大きな窓からの素晴らしい風景を眺めることできる。
植栽エリア
- 人々は我々にとって貴重で掛け替えのない環境の重要性に敏感になりつつあります。更に言えば。重症、軽症といった病気の度合いに関わらず、患者さんを取り巻く環境についても考え直さなければならない時期にきています。
- 処置や治療は患者さんの周囲の環境だけでなく、オープンスペースからも影響を受けます。そのような部分に機能的で美意識の高いスペースを持つことは治療の効率を高めるというだけでなく、患者さん、そしてその家族や病院スタッフに静穏な環境を与えます。
- 病院内のオープンスペースは生活の場、医療計画を創造し完結させる場、患者やその家族がリスクフリーで制限を受けることなく自由に享楽することができ、可能であれば自然やそのバイオリズムに触れる事のできる場所でなければならない。
- 今回のプロジェクトでは植物がストレスを抑えるという意味で、患者さんの空間に対する知覚の重要性を常に心がけてきました。
- 何よりも植栽エリアの目的はアウトドアの環境による治療上及びエコロジカルな機能の強調でした。これはセラピーパークという考え方に基づくもので、新病院を取り囲み、組み入れられ、交差する植物の要素をランドスケープの戦略的デザインに採り入れ、インテリアスペースの中で欠くことのできない部分となりました。

